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日常を綴りながら灰色楽団とバジル君へ愛を捧げる同人日記です。時折生物注意。
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苦しいよ、辛いよ、って胸から白い蛆虫を取り出すように、嗚咽に流した。
排水口がつまる。
ゴボゴボと、音にもならない未完成であるそれは、渦も巻かずに吐露された全てを飲み込む。
ゴボゴボ。ゴボゴボ。
血を吐くような脱力感と、背筋に鉄の棒を突き刺したような、痺れ。
胸をかきむしりたいが、生憎皮と骨でなりたっている場にはかきだすべき肉がない。
蛆虫が蠢いて体内をかき回す感覚は足の先から先からと、体を蝕み停滞する。
停滞されるのは都合に悪い。
足の先から、皮肉に奪われていく自由に、ただ解放された脳みそだけが行き場を失い坂道を転がり落ちる。
涙の意味さえなくしたの。
吐露吐露吐露吐露吐露吐露。
挙げ句の未来に見えたのは、体を蝕む自身の姿。
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急に書きたくなったオリジナル小説。


―――

季節は変わり目を迎える。
真っ青。
と呼んで良いほど綺麗な青空に、白い雲が浮いていた。

「わたあめが食べたいわー」

自転車の後ろに作った専用の席に座りながら、彼女は言う。
生ぬるい風が気持ち悪かった。
俺は、自転車をこぎながら後ろの声に返す。

「お前、それで太っても知らねえぞ」
「うっさい」
「太ったってぶーたれてんの、お前のくせに」
「でもねえ」

重心が動いた。
どうやら、彼女があろう事か暇つぶしに足を揺らし始めたようだ。
おいこらお嬢さん。
スカートを履いてるんだから、少し羞恥とやらを学ぼうか。

「どうせ、太ったってあんたが嫁にしてくれるんでしょ?」
「誰が、いつ言った」
「あんたが、ずっと前に言った」
「思い出を捏造してんじゃねーよ」
「あらまあ、思い出すのが恥ずかしかったのかしら?」

このマセガキーと頬をつつく彼女だが、俺と同い年だ。
あからさまにため息をついて、せめてもの急ブレーキ。
予想通り、背中に衝撃と「あうちっ!」という色気も無い声が当たった。

「痛い!」
「痛くないだろ。寧ろ、貴方の頭が当たった俺のほうが痛いですー」
「石頭じゃないもん」
「認めたな」
「知らん」
「…そーですか」

終わりが見えない。
俺は会話を諦めて、また自転車のペダルに力を込めた。
彼女はまた足を揺らし始めた。

「ねー、ちゅーしよ」
「は?」
「ちゅー」
「生憎、俺の両手はハンドルという大事な命綱を握ってますもので」
「さいですか」
「さいですよ」

錆びた自転車のタイヤが、くすんだ音を響かせた。
彼女はそれきり黙る。
沈黙なんて似合わないから、仕方がないと俺は口を開いた。

「それにしても、急に世界が540度変わったようなことを言うね」
「540度?中途半端」
「で、どうして?」

坂道になって、俺はペダルから足を離す。
ゆるい下り坂は、生暖かい風で充満していた。
口いっぱいに吸い込む。
気持ち悪くなった。

「したことないから」
「俺ですか」
「選ばれたことを幸運に思ってよ」
「はいはい」

頷きながら、ブレーキをかける。

「あんたはしたことあるの?」
「何を?」
「ちゅー」
「したことなんて、ないですねえ」
「さいですか」
「さいですよ」

キキーと耳障りな音を立てながら、自転車はカーブを通っていく。
少しだけ古びた町並みに、どうも格好の付かない俺達の姿は似合っているようで。
もう少しだけ、寄り道しようかな。
なんて事を考えていると、彼女が揺らしていた足が俺の靴にぶつかった。

「540度って、次元の狭間にいくのかな」
「次元の狭間って、あったらしいけど。この話、何回目?」

聞いたところで、彼女の手が不意に横から伸びてくる。
何をするのかと少し前かがみになって様子を見る。
俺よりも短い腕を精一杯伸ばして、彼女はハンドルを握った。
そして、俺の手の横に並ぶ小さな手がブレーキを強く握り締めた。
キキキーと、また耳障りな音。

「93回目」

止まったところで、彼女は言った。
自転車を止めて、俺は足を地面につける。
彼女は自転車から降りて、笑った。

「数えてるわけ?」

俺の言葉に、背を向けながら。

「狙ってたわけ」
「なんで、また?」
「縁起よさそうじゃない」
「どうしてまた、こんな中途半端な数字が?」

眉を寄せる俺に、彼女は振り向く。
木々が揺れて、影が出来た。

「あんた、今日が何の日か忘れてるでしょ?」
「え?」
「ケーキ、楽しみにしてるからね」

それきり、彼女は笑って走り去った。
俺は考えること数秒、自転車を降りるともと来た道を辿るように方向を変えた。
いつの間にか出ていた日に照らされて熱くなったサドルに座る。
彼女の好きな苺のショートケーキは買えるだろうか。
小さなケーキで良いだろう。
彼女の家に持っていって見せれば、彼女はきっとケーキの小ささにふてくされる。

「買ってやる俺って優しい奴ー」

一人呟いて、鼻歌交じりに自転車をこぎだした。
ふてくされながらも、ケーキを一口食べて笑い、彼女はきっと来年の誕生日について注文するに違いない。
それに答える俺は優しい奴と思いながら、口元が綻ぶのがわかった。


恋愛感情って、なんだっけ。
ポツリとした言葉に答えないのが、当然とばかりの空間を作る。こたえなんてないのと誰かが笑う。ニュアンスを変えた。こたえるはずなんてないの。意味がわかるかと笑われた。それだけ。
「…ああ、でも、しかし」
「可笑しい組み合わせ」
呟いた言葉に声がようやく反る。久しぶりに成り立つ会話に、耳が何秒かぶりに反応をする。
「確かに、可笑しい」
「でも、しかし。二つとも英語ではbutにあたる」
「but butは、つまり何になるのか」
「おおよそ、つまり。Soにニュアンスが似てる」
「かもしれない」
だが、答えではない。単純に、文章が曲がりながらも直結しているにしか過ぎない。
「話が逸れた」
「気づいて修正するかを見ていた」
「どっち?」
「後者」
修正の道を選ばなければ続く無駄な時間。失笑。

前に書いたオリジナル小説。

コミケお疲れ様でした~!




何も考えてないのね。
誰かが小さく言ったと思った。それは気の間違いかもしれないし、はたまた幻覚の類い、実際に誰かが発し耳に届いた、声の一つかもしれない。呆然と考えて辺りを見回す。何も感じない。すると、やはりこれらの仮説が有力となる。はたまた単純に自分で発していた声なのか。しかし、結末、答え、根拠などは至極当然のようにない。確定している事実のみを述べると虚しくなり、自分だけがこの場にいるような錯覚に陥る。根拠はある。自分だけの固定観念だと感ずるが、見も知らぬ人が肯定していれば自分の中に結末は留まらず少なくとも、第三者と共用しているのだ。
「だれ?」
簡素で適切な質問に答える。
「昔の作家」
「だれのことば?」
「ラスコーリニコフ」
「なに?」
「罪と罸」
答え、彼を思い出す。彼は言った。独りでいるほど孤独ではなく、寧ろ周囲に誰かがいるほど、自分は孤独になる。その定義で考えると今の自分は独りではなくなる。いつの間にか錯覚していたが、気づけば周囲には人しか存在しなかった。人の存在を感知しない限りは永久的な感情に惑わされ、確定的に孤独にはなれない。痛感する事実の中で心だけが孤独を求める哀れな人の果てを垣間見た。ざわめく。

夏がくる。
私は、ただぼんやりと空を眺めていた。
夏の前の梅雨空が、嫌いだ。

「雨、降るよ?」
「知ってるわ」
「窓閉めないと」
「お願い」
「後は、ジョーが使ってる窓だけなんだよねえ。困ったなあ」

笑い声に、私は窓を閉めながら振り向く。
相変わらずどこから沸いてくるのかわからない笑顔で、モンブランがそこに立っていた。
片手には、湯気が漂うコーヒーカップ。
もう片方には、厚いファイルが握られている。

「実家から?」

私の簡素な問いに、モンブランは頷いた。
そして、ドアを正しく背中で閉めながらほっと息をつく。
暖かい匂いが部屋に広がり始める。
モンブランは私の前にカップを置くと、書類を差し出した。

「実家からの国際便だよ」
「あら、今度はどこにいるのかしらね」

検閲の判子が何個も押された封筒を捨て、私は全面だけ見えていたファイルを取り出す。
厚いファイルの中には、実家で処分を受けた者たちの名前と写真が連なっていた。
何かしら実家に害を与える者は、時折こうして私の手元に届く。
これがいつか名簿作りに役立つからだ。
モンブランが書類に目を通す私の姿にため息をついた。

「やだなあ」
「仕方がないわ。私自身がその手本だもの。居場所がなくなったファイルの人物達はいずれここにくるわね」

私が作り出した架空のようで実在する村に、彼らは自然と集まる。

「また家を作らないと、…棟梁は暇かしら?」
「暇も何も、今度は船まで作り始めたよー」
「海なんてないのに」
「僕には棟梁の考えなんてわからないから」

モンブランはにこやかに笑う。
そして、私の背後からファイルを覗き見た。

「…ライバルが増えるなあ」
「え?」
「ここを始めた時は、僕とジョーだけの愛の楽園だったのに」
「あら、アダムとイブみたいね」
「そうだよ!だから、僕はジョーを愛し続けるの」
「でも、アダムは林檎の誘惑に負けてイブを置いていくわ」
「そうだけど、違うよ」

さらり。
モンブランは言う。

「僕がイブだから、僕はジョーを愛し続けるの」
「そう。なら、私は熟していない林檎を食べて追放されましょうか」
「うん。だから、そんなジョーを追いかけるモンブランがいるんだよ」
「でも、その例えだと私の方がモンブランより能力が劣っていることになるわ」
「んー、僕は気にしない。ジョーがジョーなら、それで満足。あ、そうすると林檎を食べたジョーは、僕のジョーじゃないのかな」

モンブランは頭を悩ましたが、一瞬だった。

「そんなジョーだったら、追いかける意味がないや」
「簡潔ね」

私の淡泊な言葉に、モンブランは当然と頷いた。

「だって、僕が好きなのはジョーであってジョーな人物だから」

平然とする姿が滑稽に見える。
しかし、決して笑いの対象にはならなかった。
私は、カップに手を伸ばす。

「…中身がココアなのはなんで?」
「ジョーが幼いとき、ココア好きだったって聞いたの」
「誰に」
「郵さん」
「…そう」

通りで甘い匂いがしたはずだ。
私は懐かしい香りに、口を満たした。


久しぶりのオリジナル小説。
…幸せ。
因みに知らない方に簡単な説明。
ジョー(綺麗で頭がよいお姉さん)
モンブラン(ジョーより賢く可愛くてジョー一筋な男の子)
棟梁と郵さんは初登場なのでまだ姿は未定だったりします。


このオリジナル小説が書いていて一番平和な気持ちになる…。

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