慣れることと忘却することのどちらが辛いかと問われ、即答出来なかった自分を思い出したので忘却することにした。
要するに、恥であり、悔しく、それほどまでな自身を嫌ったのである。
「なあ」
声が聞こえたので、無視を決め込んだ。
これは慣れた行為に当たると、予想の範囲内で答えるが思考からは捨てた。
「なあ」
二度目。
流石に振り向いた。
「何よ」
「振り向かねえから、なんかあるのかと思って」
「何もないわ」
「見てえだな」
コンはそれきりで、用意されたばかりのアールグレイに口を付けた。
因みに、洒落た真似をしたのか私の紅茶はレディグレイである。
仄かにオレンジ畑が広がる。
波長。
「ジョーの視界に僕が入れば良いのに」
アールグレイを注ぎながら、モンブランが口を開く。
不可解な匂いだ。
「モンブランて、そればっか」
コンが苦笑した。
注ぎたての温かい湯気が室内に木霊する。
反響。
「僕はジョーを愛してますから」
洒落にもならないと、柑橘を吸い込んだ。
全ては慣れに結束されるのだと、言葉の冷酷さが伝えた。
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