前に書いたオリジナル小説。
コミケお疲れ様でした~!
何も考えてないのね。
誰かが小さく言ったと思った。それは気の間違いかもしれないし、はたまた幻覚の類い、実際に誰かが発し耳に届いた、声の一つかもしれない。呆然と考えて辺りを見回す。何も感じない。すると、やはりこれらの仮説が有力となる。はたまた単純に自分で発していた声なのか。しかし、結末、答え、根拠などは至極当然のようにない。確定している事実のみを述べると虚しくなり、自分だけがこの場にいるような錯覚に陥る。根拠はある。自分だけの固定観念だと感ずるが、見も知らぬ人が肯定していれば自分の中に結末は留まらず少なくとも、第三者と共用しているのだ。
「だれ?」
簡素で適切な質問に答える。
「昔の作家」
「だれのことば?」
「ラスコーリニコフ」
「なに?」
「罪と罸」
答え、彼を思い出す。彼は言った。独りでいるほど孤独ではなく、寧ろ周囲に誰かがいるほど、自分は孤独になる。その定義で考えると今の自分は独りではなくなる。いつの間にか錯覚していたが、気づけば周囲には人しか存在しなかった。人の存在を感知しない限りは永久的な感情に惑わされ、確定的に孤独にはなれない。痛感する事実の中で心だけが孤独を求める哀れな人の果てを垣間見た。ざわめく。
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