積み木に世界の向こうまで見える丸い空洞を作る。
この場合に使用する器具は何でも構わない。
一般的と言われるものを挙げても構わないが、あえて私はハンマーを振りかざし穴を作ることを提案する。
積み木が崩壊したのならば、またハンマーを振りかざせばよいという、至極端的な行為なのだが、面倒だと言う人は穴を掘るためでもなく、ただ一直線にネジや鉄の器具を振り落とすなんとも不合理な機械を使っても良い。
ともあれ、穴が空けば良いのだ。
これに対し、私がハンマーを使った理由としての証明に至る記述が生まれるのだが、生まれた空洞にテグスを通す。
また、それを数珠繋ぎにする。
手間を考えれば、当初の時間など省いても良いのだ。
しかし、あるいは積み木よりもテグスの方が数倍も感覚を空けて長々と繋がれ、果てに積み木がテグスに固定されたのならばテグスの数珠繋ぎになるのだろうか。
これは妙案であると、久しぶりに外を見る目を変えた。
ドアが開く。
「ジョー、今月の…」
「お茶はダージリンにしたよ」
「ええ」
「今、何を考えてたの?」
「モンブランには意味がない事よ。パラドックス」
「パラドックスて逆説だろ?てか、俺の話を、」
「うーん。でも、ジョーの視線を外せる話には興味があるなあ」
「暇人ね」
「たまには足し算じゃなくて割り算しようとしながら紅茶を用意したら、メープルが切れてたんだ」
「メープルが好きなのはモンブランでしょう」
「まあ、丁度良いことにコロちゃんが英国にある大使館の国旗が欲しいと呟いていたから、頼んじゃった。お使い」
「英国の紅茶は久しぶりだわ」
「コロちゃん、目が良いから僕も楽しみ」
「だー!もう!てめえら話を止めて少しは来客に目を向けねえのか!もしくは俺が筋道を1から10まで並べて説教すんぞ、または丸一日俺なりの理屈と理性と常識を駆使しながら納得するまで話つけてやる」
訪問者、コンが怒号を撒き散らす間にモンブランが紅茶を私の机におき、手短な椅子に座っていた。
私はといえば、程よく冷めた紅茶を飲んでいた。
先ほどまでの会話において、どの台詞と同時にこれらの行為が行われたのかは省略とする。
私は、紅茶を飲んだ。
「後者」
「なんだ、耐久力ねえのに意外に話聞く気あるんじゃ、」
「後者だと聞き流せるしね」
「…てめえらあ!」
さらりと告げたモンブランに、私は時として言わなくても良い言葉を再度理解した。
オリジナル小説、areaより。
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