最近小説を書いていないので暇つぶし練習オリジナル。
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僕の学校は、最近建て直したばかりである。
寄付金を沢山取られたと普段温厚な母が思わず文句を言ってしまうほどのお金をつぎ込んだ校舎は、ところどころにレトロの感の漂う、僕としては好みのものだ。
その階段に腰掛、僕はため息を一つついた。
生憎、今は授業中なので人っ子一人居ない。
何故授業中に僕は廊下にいるのだろうか。
それは、授業が開始した早々に先生に用事とやらを言いつけられたからである。
用事も終えないままに、僕は一人休憩中なのだけれど。
「こんなところでサボり?」
そんな僕の隣に、一人の少女が腰掛けた。
僕はため息をつき、出来るだけ小さな声で問いかけに答える。
「あの先生の授業、眠くなるだけだし。どうせノートも取らないし」
「でもサボりはよくないよ」
「コトリは授業受けたことがないから言うだけ」
小さな頃から病院に居たと言ったのは誰であったかと睨みつける僕に、長い黒髪を揺らしコトリは苦笑した。
「でも、棟君に付き合って授業受けてるよ」
「コトリのは趣味だろ」
ため息混じりに言う僕に、コトリは困ったように眉を寄せる。
それは仕方が無いことだと告げるようであった。
仕方が無いことなのだ。
立ち上がる僕の目線に合わせるように、コトリは軽くジャンプをする。
そしてそのまま、空中で停止した。
廊下に設置されている鏡には、僕の姿しか映っていなかった。
「確かに、私の姿は棟君以外の誰にも見えないから」
小さく笑ったコトリは、そのまま消えていきそうだった。
コトリは、僕より一つ年下の少女である。
小さい頃から病を患い、ずっと病院暮らしだった。
そんなコトリが外に出れたのは、死んでからだった。
真っ白の肌が、病的なコトリの姿をより一層際立たせる。
「でも、私は楽しい」
コトリはふわりと微笑み、ふわりと宙に舞う。
僕の両肩に置かれた手に、質感は無かった。
冷たさも何も感じない手に、僕は視界を落とす。
透き通るような、感覚だった。
僕は仕方がないと腕時計に目を落とす。
そろそろ休憩をするのにも限界の時間が訪れるようだった。
僕は先生に頼まれた資料を取ってこようと階段の手すりに手をかける。
その時、不意に僕の肩に重みがかかった。
「棟ちゃんのお手伝い、してあげようか?」
クスクスと楽しそうに笑う声は、コトリのものである。
しかし、重みがあるというのは、実体であるということ。
コトリではないその重みに、僕はため息をついた。
「姉さん、面倒だから消えてて」
「あ、棟ちゃん酷い。私は可愛い弟のことを思って言ってるのに」
「先生に姉さんの姿を見られたほうが面倒」
「そう姉を邪険に扱わなくても良いじゃない。私のお陰でコトリちゃんと出会えたんだし」
振り向けばコトリと同じ顔でありながら、全く雰囲気の違う表情がそこにあった。
今度は鏡にもしっかりと映っている。
「姉さんが現れるたびに、そのコトリが疲れるんだからやめといてよ」
コトリの俗に言う霊力を代償に姉はこの世に実体を表すことができた。
本当の僕の姉は、僕よりも三歳年上である。
少し前まで立派ではなくともそれなりに姉として認識にしていた存在が、自分よりも年下になるというのは奇妙な感覚であった。
少し前というのは、つまり僕が姉と最後にこの世で顔を合わせたときになる。
姉は既にこの世に生きている存在ではない。
それならば、何故死んでいる姉がこの世に姿を現せるのかといえば、答えは複雑だった。
姉は死んでから病んでいたコトリに臓器提供をしたのだ。
そのコトリが不慮の事故で亡くなったことから、話はややこしくなる。
とにかく、コトリの小さな体には二人分の魂が収められているようなものであった。
しかも姉の方が力が強いらしく、姿形はコトリでありながら、髪は姉が生前まで大切にしていた黒のロングヘアーで服装は黒のブラウスにスカートときている。
全く、僕はコトリと姉のどちらを相手にしているのか毎回頭を悩ますばかりであった。
「そのコトリちゃんが棟ちゃんのお手伝いをしたいって言ってるんだから、仕方ないでしょ」
二人だけの会話を当然僕が聞くことは出来ず、流されるばかりである。
僕は少しばかり背の低い姉の姿に、小さくため息を落とした。
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テスト中にもそもそ考えていた少し話しベタで幽霊な女の子とその女の子の体を使って実体になれる唯我独尊的なお姉ちゃんとそんなお姉ちゃんに振り回される面倒くさがりやな弟君のお話。
途中で面倒になって相当説明を削りましたげふげふ。
しかしこれは私の目指すものとかけはなれているという…うーん。
…オリジナル小説を書くとどうも一人称視点でお話が進むので謎なのです。
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