貴方は行った。遠い場所へ。もうかえらない。
「今ならきっと、」
笑って、言える。
「愛していた」と。不思議な人だった。気紛れに手を引いては、冷たさを知らせた。掴み所もなくて、名前を捩り空へ消えていくような人だった。そんな貴方は行った。もうかえらない、とは言わずに姿を消した。霧の様に、と例えたら激怒するだろう。
しかし。
「なんだか、なあ」
苦笑が零れた。そんな後ろ姿も貴方らしいの。後ろ姿しか思い出せない自分が、自分らしいの。貴方はきっと、笑うでしょう。
不思議だった。とても。けれど、こうして好きになれたと、気持ちが良いの。傷ついていたのに。
きっと、お互い様。
「ねえ、雲雀さん」
貴方の中に俺は居ますか?
ずっと前の小さな自分は貴方を愛するでしょう。
「俺も、愛していた、んです」
呟いた。きっと、また会えると信じながら、別れと共に出会った感情に結末を与えた。
ねえ、二人で見つけた花は今でも上を向いて咲いています。知らないでしょうから、教えてあげます。そう、教えてあげたいから、また…。
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