うーん。
でもやっぱりハロウィンですし、何か書きたくなってきました。←
というわけで、オリジナル小説です。
―――
ハッピーハッピーハロウィン。
誰かが歌った。
私は、小さく木霊を返す。
「ハッピーハッピーハロウィン」
「トリック?オア、トリート?」
「さあ、どんな悪戯をしてくれるの?」
「ずっと、ジョーの傍に居る」
「いつもと同じね」
「いつも僕は、意地悪だから」
笑ったモンブランに私も笑った。
ハッピーハッピーハロウィン。
聖なる夜とされる日に、お菓子を求めて子供達がお化けとなる。
その矛盾が面白くて。
私は、昔からハロウィンが好きだった。
面白いから。
なんて、なんて、面白いのだろう。
人が作り出した、架空のお化けを認めるのは私達。
私達だけの聖なる夜。
人間のエゴと妄想が作り上げた夜。
なんて、なんて、人間らしい。
「トリート」
「何をくれるの?」
「何が欲しいの?」
「ジョー」
私は笑った。
「あら、可笑しいわ」
「可笑しくないよ。僕はいつでも、正直」
「そう」
「そ」
モンブランは確かにいつでも正直である。
しかし、この正直さはどこからくるのか。
考えるときりがないようなので、私は疑問を忘却することにした。
ああ、とても心地よい気分である。
トリック、トリック。
トリート。
「そうね、ピースをあげる」
「え?」
「最近、流行ってるらしいじゃないの」
「ああ、あの立体型したパズルのこと?珍しいね。流行に鈍感なジョーが知るなんて、誰がそんな野暮な知識を教えたの?」
「コロちゃんからの、トリートよ」
「ジョーが、コロちゃんにハロウィンしたの?」
「したの」
信じられないという顔をするモンブランに私は堪らず笑った。
コロちゃんは、面白い。
だから、私もコロちゃんを試したまでだ。
そんなことに、ここまで衝撃を受けるなんて。
モンブランも、皮肉なものである。
私は笑う。
「ピースじゃ、足りない?」
「ううん!一欠けらでも、くれるなら、トリックしない」
「そう」
「でも、ずっとジョーの傍に居る」
「そう」
私はピースを渡した。
ああ、私が崩れ去っていく。
かぼちゃの私が、ぼろぼろと、片隅から、ピースの外れたその部分から、パズルはゆっくりと崩壊して、崩壊して、崩壊して、ぼろぼろ。
ぼろぼろ。
残ったのは、きっと、一つの飴玉。
「飴をあげる」
「ありがとう」
かぼちゃ味のキャンディーを差し出した私に、モンブランは満面の笑顔を見せた。
トリック?トリート?
どっちでも、ハッピーハッピーハロウィン。
何が幸せか、私には判断がつかないけれど。
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